ティーダフラッグス2017 応募作品「星空ルーフと風のシェルター」
沖縄県内の40歳以下の建築士によるコンペの応募作品です。
最終審査に進みましたが、残念ながら受賞には至りませんでした。糸満市摩文仁にある平和祈念公園のバス乗降場に設置されるシェルター(屋根)の設計を提案するというものです。
私たちの提案は、バスによって来園した方たちがいったん集合できる「たまり」となる軒下空間や横断歩道を覆う大屋根を設置するという機能的な特徴を持つものです。また、その大屋根や歩道の上に設置するシェルターは、「慰霊の地」「聖地」としてのコンテクスト(背景)や沖縄の自然をモチーフとしたデザインを取り入れた3つのエレメント「星」「風」「木」によって構成されたものです。さらに、聖地の内外を隔てる結界としてのお寺の門や神社の鳥居のように、そこをくぐるときに清らかな気持ちに切り替わるような場としての機能を持たせたいと考え、「くぐる」という行為が意識されるようなデザインを大屋根に取り入れました。
亡くなった人が夜空に光る星となるという概念は、ほぼ全世界共通のものであることから、星空ルーフと名付けられたこの大屋根は、透光性のある膜構造の屋根を通過した光が、星空をモチーフとしたアルミパンチングパネルの軒天の孔を通って軒下に降り注ぎ、星空のきらめきの中の軒下空間で、亡き人に思いをはせるきっかけを作る場となることを期待したものです。また、周囲の風景を鈍く反射させるアルミ素材を使ったシェルターの屋根を沖縄に吹く清涼な風に見立て、それらの屋根たちは、生命の象徴である木をモチーフとした柱によって支えられるという構成になっています。
普遍性のある概念を用いることで、人々の心に戦争の苦しみや悲しみ、平和への思いといったことについての共感を呼び起こすきっかけとなること、そのためには、恣意的な形態操作を排除し、これらのコンセプトやストーリーと屋根としての機能のみによって建築を成り立たせることが必要であると考えました。
第6回 沖縄県アンダー40 設計競技 ティーダフラッグス2017